むそうとは
むそうに関わる人たちの中で、他の人にむそうを説明する時、むそうとは何かを考える時、もしかしたらすぐにその答え話し出させる人はすごく少ないのかもしれません。そこで経験したこと、感じたこと、出あった人たち、それら全てが大きな影響を自分に与え、今の自分は「むそうありき」なんだと思う瞬間を多く経験するのだけど、それでも上手く言葉で表せない、そんな存在。ただ、むそうのキャンプに出会えたことを心から嬉しいとみんな思っているのだけれど。
むそうのキャンプは1972年に始まりました。北海道中標津にある佐伯牧場の一角を「東京むそう村」として解放し、夏の3週間の間、大学生と小学3年生〜高校生の総勢約40名が集まり、野外の共同生活をメインにハイキング、創作活動、地元の子供達との交流をしてきました。むそうのメンバーは参加者の口コミによって広がり、小学生の頃に参加した子供たちが大学生になって今度は引率の立場になったり、OBとなったメンバーが家族や友人を連れてきたりもして。しかし、ここ10年は大学生のボランティア不足などの関係で、新しい参加者を集わずに、OBOGの人の手によって存続してきたのです。そして今、根本的な想いや生活スタイルはそのままに新しいむそうを始めようと思っているのです。
むそうの生活はすごく多様です。キャンプとして固定の目標があるわけでなく、参加した一人一人が、共同生活をする上での共通の約束は守りながらも、自分がやりたい事を自分で見つけ具体的に行動する場だからです。だから、時間の過ごし方はひとそれぞれ。何もしないも、もちろんあり。何かに思う存分集中するもあり。ひとりもあり。みんなもあり。やりたい事をみつけて、一緒にやりたい人をみつけて、分からない事を教えてくれ誰かがいる時もあれば、一緒にやり方を摸索する仲間がいる時もあれば、みんなで大成功だったり、みんなでお手上げという時もあり。
そこは、期間限定で現われたシェアスペースで、共同生活の場なんだけど、自分自身にしっかりと向き合時間であり、これからもずっと続くであろう繋がりをつくる場所。キャンプを通して、様々な体験をし、自分の視野を広げると共に、様々な年令の人と共同生活をすることのより、今の時代に足りないと言われているコミュニケーション能力や、自分がなにすべきなのかの判断力、何か起きた時の問題解決能力を自然と養うことができるのだと思います。
むそうが大切にしていること
それは「やさしく生きること」。
自分にやさしく
自由時間中心のむそうの生活の中では、自分の心と体に意識、無意識に話しかける機会がたくさんあります。みんなで同じ事をする、人と自分を比べて何かをするのではなく、「自分では何をどのようにしたいのか」そんなことを自問し、決定し、そして行動を起こす。その先に困難や問題があったら、今度はどうすればいいのか考える。自分で自分の行いの結果に責任を持つ。困った時には、無理をせず誰かにアドバイスやサポートを求める。自分で考えて生活する力や、発想力問題解決能力を豊かにする時間になるでしょう。
また、薪を使っての火おこしや、料理、参加者や運営チームによるワークショップなど、実践を通して習得するスキルは、今後の生活の中できっと役に立つでしょう。そういうスキルを楽しにながら習得することも、自分にやさしい生き方の一つだと思うのです。
他人にやさしく
自分でやりたいことを決め、自分らしい時間を過ごすキャンプであると言っても、人と人との集まりである以上、共通の約束はいつかあります。何より、それぞれの個性を尊重するということ。他人の言動を否定しない、ジャッジしないということなど。また、参加者をいくつかのグループに分け、当番制でキャンプをやるにあたって、やらなければいけない仕事を分担します。例えば、食事当番であったり、掃除当番であったり。自分と他人の両方を尊重し、その上で自分らしくあるということを、日々の生活で身につけます。
そして、むそうの一番の魅力は、そこで起こる一期一会。参加する様々な年代の、様々バックグラウンドをもった人との出会いと、共同生活を通して築く、深い繋がり。横の繋がりだけでなく、縦横斜めのそんな繋がりは、キャンプが終わっても参加者の生活の一部に、心のよりどころになるはずです。
自然にやさしく
私たちは、自然界にできるかぎり爪痕を残さない生活を心がけています。むそう村には、電気も水道もありません(クラブハウスには電気はあるけれど、基本的に使いません)。太陽と共に起き、水は必用な分だけ汲みに行く。ガスを使わずに、薪で料理をする。汚れた食器は米ぬかを巾着に入れて洗います。もちろん最小限の水を使って。ナチュラルな石鹸を使って川でお洗濯。日が沈んだら、ランタンに火を灯し、キャンプファイヤーを囲んで、星空の下でおやすみなさい。
いつもより時間の流れをスローにし、自然の変化に目を向け、自然界の時間帯に合わせて生活することで、自然が自分の生活の一部であることを感じ、今まで以上に「自分ごと」として自然や環境について考えられる人になってもらえたら嬉しいです。実際にそんな生活を体感することで、より心に響くと信じています。
むそう村
そこは北海道標津郡中標津町。とある牧場の一角に突如現れる「むそう村→」のサイン。その先にあるのが、私たちがキャンプ場を作る場所。人と人とが出会い、時間と想い出を共有する「むそう村」。牧草地の緑広がるその場所にあるのは過去の参加者の手によって作られた小屋、通称クラブハウスと物置小屋のみ。それ以外のもの全てが、期間限定でスタッフとボランティアの手によって夏の間だけ現れます。トイレもご飯を炊く釜戸も、テントを張る場所も。
敷地内には川が流れていて、石で水をせき止めて泳いだり、岩の裏に貼りついた虫を取って魚釣りをしたり。独特のゆったりした時間を過ごし、どこまでも続く空の下思う存分遊ぶこと。北海道ならではの大自然の中、自分の小ささを知ること。悩んでいることが実はすごくちっぽけなことかもしれないと気付くこと。そんな感動を味わえる場所。
Yuri Baxter-Neal
ユリ・バクスターニール
米国の大学でレクリエーション学の学位を取得。日米においてキャンプ、ワークショップの企画運営、またデザイナーとしての経験を積む。2010年にオレゴン州ポートランドへ移住し、旅人が「暮らすように旅をする」機会を提供するLIFE Samplingという会社を主宰。旅人とローカルをつなげる活動を行う。同時に、ローカル向けに味噌つくりや日本食のワークショップを開催。また、日本国内に地元に根付いた、多世代向けの自然学校を作ろうというプロジェクトにレクリエーションデザイナー・メンターとして携わる。むそうには子供の頃に初参加し、大学生のころには引率として参加。自然と遊びが大好きで、割と常にそとで遊んでいる。アーバンパーマカルチャーデザインコース修了。米国赤十救命救護・応急処置講習受講済み。
Ako Sanbongi
三本木 あこ
幼児保育の現場に10年以上携わる傍ら、俗にハンディキャップのあると言われる自身の子供の個性を尊重し、アーティストとして支えながら、ノーマライゼーションの考えを広める活動を行う。むそうには、中学1年で子供として初めて参加し、その後大学生で引率側になる。OBになってから現在までも多くの子どもたちをむそうむらへ牽引してきた。むそう歴30年。みんなの肝っ玉母ちゃんてきな存在。むそう村を通るトレイルを整備し保護しようというプロジェクトにも深く関わり、クラウドファンディングに成功。とにかく 自然の中にいるのが好き。山森海川あそびなんでも好き。NEAL自然体験活動指導者リーダの資格保持。日本赤十字救命法講習受講済み。
Kaito
かいと
幼児期に知的にハンディ(自閉症)があると診断される。 その頃から自然や生きものを絵を描くこと、モノをつくることになる。独自の視点でものごとをを捉え、色彩豊かで、繊細かつ鮮明な作品をつくりあげる。生物、自然をテーマにした作品が多く、彼の生み出すキャラクターは、それぞれの性格までもがにじみ出ているよう。個展を始め、ゲストハウスの看板や、海の家の壁画、ライブペインティングイベント実施など多方面にわたって活躍する。そんな彼の作品がマダガスカル関係者の目にとまり、在日マダガスカル公認アーティストとして任命され、彼の作品がPRに使われている。神奈川県平塚市のスタジオクーカ 勤務。